”力”の寺院

[ 1 ] アイ=シロトラ - 2011-12-24 21:54:11
 アドロードの片隅の、小さな寺院。周りとは明らかに違う、東方様式の建物に、一人の旅人が到着した。
 全身真っ白の少年。いや、少女である。旅でくたびれた東方風の服も白、肌の色も東方人なのに白い、短いお下げにした髪も白、瞳の色ですら白である。
「こんにちは。東方から来ました。アイ=シロトラです。同門のよしみで宿を御お借りすべく、参りました。仁様からの紹介状があります」
 少女が差し出したのは、「紙」でできた書状である。羊皮紙が一般的なアドロードでは珍しい。
 書状を改めた僧侶は、うなずいて、少女を招き入れた。少女は礼を言いつつ、安堵の吐息をつく。長旅の末、とにかく目的地にたどりついたのだ。
 
 荷物を部屋に置く前に、アイは、神像の一つに向かった。
 筋骨隆々とした神像。アドロードの人々からは、「腕力さま」と呼ばれているモノである。
「どうぞ、異国でのボクの行動をお守りください。金剛不壊の筋力が、常にあらんことを」
 手を合わせて祈る。祈り終わった後、気合いの声とともに、「腕力さま」の前にあった岩に、拳を叩きつけた。
 拳が石を砕く。すでに凸凹になっていた岩に、また一つ、大きな割れ目ができた。
 
 こうして、アイ=シロトラのアドロードでの生活が始まったのである。

[ 2 ] アイ=シロトラ - 2012-01-04 17:24:20
「とおりゃあ!」 
「えい!」

 寺院内の武道場に、少年の声が響く。
 
 ここ数日、アイ=シロトラは、特訓に励んでいる。打倒、ヴィランズの「必殺技」を完成させるためだ。
「ダメだな。もう一回おねがいします」

 「れすりんぐ」の本を確認しながら、アイは首を振った。
 アイの言葉にうなづいた拳法僧侶が、五体の藁人形を空中高く放り上げた。五体の藁人形には、羽を模したモノが付いており、それぞれに、赤、青、黄、白、黒に塗られている。
「赤!」
 拳法僧侶が叫ぶ。アイは、素早くジャンプして、赤い羽根の藁人形に、空中で技をかけようとする。だが、技を完全にかける前に、地上に落ちてしまう。

「まだまだ、タイミングが遅い。これでは、素早く動く敵に対応できないぞ」
 僧侶の指摘に、アイは、無言でうなずく。両手と膝の動きを再度確認して、再び言った。
「もう一度、おねがいします!」

 アイの特訓は、まだまだ続く。

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